さようなら、オレンジ (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房 (2013年8月30日発売)
3.58
  • (135)
  • (255)
  • (245)
  • (67)
  • (20)
本棚登録 : 1745
感想 : 317

「言葉」が支えるものの大きさに圧倒される。
言葉が通じない、思いを伝えられない、それは自分自身の存在さえ認められていないと思えるほどの不安。
その不安と絶望からの脱却。そこに必要なのは諦めない強さと希望とゆるぎない自信。
そう、「諦めないこと」、文字にすれば陳腐なこの一言の大きさを知る。
そして、この世界に生きる女たちの力強さたるや!
母語とは別の言語の中で生きていく、それは自分という存在自体を見つめなおすこと、そして新しい自分自身を作り出さねばならないということ。
それぞれの理由で祖国から離れて生きている二人の女性。言葉の不自由さがすなわち心の不自由さでもあり。よるべない苦悩の中で二人が「言葉」を手に入れ自分を生きなおしていく、その根底にある強さは「母なるもの」の力なのか。
生み出し、育む力の絶対的な大きさを目の当たりにする。
二人が「オレンジ色のもの」に別れを告げる瞬間の美しさと気高さ、その風景を想像するとき私の中にもきっとある、稚拙で原始的な力の存在を感じる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2013年11月
感想投稿日 : 2013年11月14日
読了日 : 2013年11月14日
本棚登録日 : 2013年11月14日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする