山尾悠子の「遠近法」と舞台が似ているという「バベルの図書館」が読みたくて手に取った。以前アンソロジーで読んだ「円環の廃墟」の良さがわからなかったので(一口だけ食べて)食わず嫌いをしていたボルヘス。今回も初めはなかなかのれなかったのだけれど、前回今一つだった「円環の廃墟」でようやく面白くなってきて、読み終えることができた。諦めないでよかった。
波長が合わない話は「アイデアはわかるけどそれを面白いと感じる感性が自分にはない、無」となってしまう。自分は独特な世界の詳細をよろこび、その設計図にはあまり興味を惹かれないのだろう。ただ、たとえばバベルの図書館の世界やメナールが書こうとした現代の『ドン・キホーテ』が見えたときは、大学でギリシャ哲学を学んだときの驚きと似た心地よさがあったのは新鮮だった。平たく言うと「よくこんなこと考えついたな!」という驚き。正直に言うと自分にはそれ以上の感動はなくて、小説として心から面白いと思える人がうらやましい。
推理小説風の短編群は、通常の小説を読むモードでも読める。最後に頭の回転扉がぐるっとするようなひねりがあって、どれもわりと楽しく読んだ。
今回面白く読んだのは、「円環の廃墟」「八岐の園」「記憶の人、フネス」「南部」。「円環の廃墟」を面白く読めたのは、主人公の取った方法が「寝る」なのが可笑しかったからかもしれない。それで物語に集中できて、最後に「おお円環だ」と満足できたのかも。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
スペイン - 小説/物語
- 感想投稿日 : 2019年1月1日
- 読了日 : 2019年1月1日
- 本棚登録日 : 2019年1月1日
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