忌中 (文春文庫 く 19-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2006年10月6日発売)
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本棚登録 : 263
感想 : 33
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初車谷長吉。予期していたほどドロドロではなかった。どの話にも死と性が絡みついているのに、提示されているのは男の垢抜けない純情であり、「そうか世界にはこのような善きものがあったのだな」と目が開かれる思いがした。たぶんそんなに特別な善ではなくて、分量の違いこそあれ、多くのひとの心にはこういうまごころが沈んでいるのではないかという気がする。普段は意識しないのだけれども。

人生の波を上手く乗りこなせない登場人物たちに対して、「もうちょっと上手くやりなよ!」という気持ちになると思っていたのに、少なくとも読んでいる間はそうならないのが不思議だった。心中話への感想が、「だってもうこうなっちゃったんだもの、奥さんがついてきてくれてよかったね」だ。これは長吉の勝ちではないだろうか。

「神の花嫁」には「やつあたりすんな!」って思いましたけどね。でも同情はした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本 - 小説/物語
感想投稿日 : 2012年6月5日
読了日 : 2012年6月4日
本棚登録日 : 2012年6月5日

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