変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1)

  • 光文社 (2007年9月6日発売)
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感想 : 155
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「変身」は訳を変えながら3回目だけれど、一番面白く読めた。はじめて読んだときは暗くてじめじめした話に感じたのに、こんなにコミカルな話だったとはびっくり。特に、グレーゴルが虫の身体を使いこなせるようになってから、部屋の中を縦横無尽に這いまわって、その跡がねとねとになるところが好き。吉田戦車ぽくないですか。吉田戦車がカフカぽいのか。

再読は読書会で「判決」を読む必要があったのがきっかけ。「判決」もそうなのだけれど、父親に対する恐怖、他者にとって自分は煩わしい存在ではないのかという恐怖を、奇妙なユーモアにくるんで書いている点が共通している。そういう主人公を、可哀想なだけではなくて、鈍感なウザキャラに設定しているところが乾いていてうまいなあと思う。

ところで、丘沢さんが訳者あとがきで白水社版に上品に文句をつけていてにやにやした。改行の数があまりに違うのはたしかにいただけない。でもどの訳が一番原文の空気を伝えているのかは簡単に言えないなとも感じていて、それは読書会で出てきた読み方がかなりばらけていたから。訳者の人たちは(おおむね)みんな、自分のカフカを真摯に日本語で再現しようとしていたんだろうなと思う。カフカおもしろいよカフカ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ドイツ - 小説/物語
感想投稿日 : 2017年10月14日
読了日 : 2017年10月14日
本棚登録日 : 2017年10月14日

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