東日本大震災後の世界をどのように捉え変えていくことができるかについて、村上春樹の小説、戦後の特撮ヒーロー、最近のポップカルチャーを素材に論じている。各論が終わるごとにそれまでのまとめが入る、親切な作りの本。
過去40年間の特撮ヒーローにおける変身と正義の変遷を論じた箇所はとても面白かった。これも一種の集合知なのか、そのときどきの5歳児にウケる(納得できる)世界観が現実世界を如実にすくい上げている。初代ウルトラマンを見ていたおじさんたちと今の子供たちでは、世界の成り立ちが怖いくらい違うのだ。
拡張現実に向かって想像力を働かせようという提言は、<いま、ここ>に働きかけるという点で、フェアトレや育児サポートの促進などで世の中をよくしようと活動している今の30・20代の動き方を見ていると腑に落ちる。初代ライダー世代はそういう拡張現実的な表現や活動に物足りなさを感じるかもしれないけれど(日経を読むとそんな感じだ)、なんというか、原発が爆発しても終わらない世界にあっても、ゾンビ化しないでみんな生きていけるんだという気分になった。
しかしわたしもどちらかといえばオールドタイプであり、「キャラ>>物語」なコンテンツはあまり楽しめない。もうそういう脳みそに仕上がっちゃってるから、これから出てくる最先端の「面白いもの」を楽しむことはできないんだろうなあとちょっとさびしくなった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
社会
- 感想投稿日 : 2012年1月18日
- 読了日 : 2012年1月17日
- 本棚登録日 : 2012年1月18日
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