狼たちへの伝言 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (1992年5月20日発売)
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落合信彦の【狼たちへの伝言】を読んだ。

僕はいままで、なぜなのか理由はないが落合信彦を毛嫌いしていた。言うなれば「喰わず嫌い」というや

つだ。だが、意を決して読んでみると・・・。

実に興味深く、濃い内容だった。僕の中で「ジャーナリスト落合信彦」を見る目が変わった瞬間だった。

落合氏の世界情勢を見る目は素晴らしい。独学で英語を学び、アメリカのオルブライト大学に留学をす

る。その後、テンプル大学の大学院に進み、卒業後はオイルビジネスの世界に身を投じる。

己の体と頭ひとつで生き抜いてきた男の視点は、僕のように平々凡々と生きてきた人間にとって、衝撃以

外のなにものでもない。

しかし、ただその視点、言論に影響を受けたわけではない。この本の初版は1988年である。つまり書

かれている内容は約20年前の世界情勢だ。いまの若い人は「ソ連」などと言われてピンとくるだろう

か?そんな時代のことである。北朝鮮だって金正日ではなく金日成政権なのだ。そんな内容のどこに惹か

れたのか。それは、今現在の世界情勢の原点であるからだ。世界が大きく動き出した激動の時代なのであ

る。アメリカとソ連の東西冷戦、東西ドイツの統合、ベトナム戦争がもたらしたアメリカ国内への影響、

中近東のオイル戦争と内戦、ゴルバチョフによるペレストロイカ、など今尚続く問題や、問題の原点、歴

史などが教科書以上に学べるのだ。学校で習った事柄の詳細や裏側が分かるのは実に面白い。それを知っ

た上で改めて今の世界情勢を見てみると、今まで気付かなかったことが見えて実に納得できる。

なにより、面白いのが落合氏の交友関係から見出される世界の真実である。アメリカのロバート・ケネデ

ィと懇意の仲だという氏の話は実に面白い。あの、J・F・ケネディの実弟であるロバートとの交友で明

かされるJ・F・ケネディ暗殺の謎とJ・F・ケネディという男の実態。とても興味深い。

その時、我が日本はどうだったか。宇野政権が宇野首相の女性スキャンダルで崩壊の一途を辿り、碌な外

交も出来ず、世界から取り残されていく。まさしく今の時代と同じである。それだけ、日本の政治家は成

長していないということなのかも知れない。

他にも氏独自の観点からの人生論などもあり、賛成できる点、出来ない点様々ではあったがどれも面白か

った。この本に出合わなければ、僕は世界情勢の事実は理解できても真実を見極めようとする目をもつこ

とが出来ないでいただろう。そういった意味でも人生観を変える一冊だったのだ。

真剣に世界を見ようとしたい人には是非読んでもらいたい一冊だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 男性作家
感想投稿日 : 2009年7月26日
読了日 : -
本棚登録日 : 2009年7月26日

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