一日の終わりであり、一日の始まりである午前零時という時間。
「12時」と言うとなにか軽い感じがしないでもないが、「午前零時」と言われる
と、とてもおどろおどろしい感じがするのは僕だけだろうか。
13人の作家が描いた13通りの午前零時。サスペンスというよりほぼホラー。
浅暮三文という人の「悪魔の背中」という作品がとても印象強く背筋が寒い。
騙された女に復讐したいがために悪魔を召喚する主人公。悪魔の召喚方法はいたって簡単。
鏡を二枚向かい合わせに置き午前零時を待つだけ。午前零時は特別な時
間で悪魔が片方の鏡からやってきて反対の鏡へと通り抜けるのだという。
その瞬間を見計らって鏡をずらせば悪魔は向こう側に渡れずに人間界に
現れたままになるという。このなんだかちょっとリアルにできちゃいそうな
シチュエーションが怖い。この文章をここに書いてるだけで怖い。
そして迎えた23時59分59秒。片方の鏡に小さな黒い点が写る。
その点はだんだんと大きくなりこちらに向かってきて・・・。
ああ、ここまで書いて鳥肌がたってきた。基本的に僕はホラーが苦手
なのだ・・・。
ではなぜこの本を買って読んだのか。それはなんとなくアンソロジーが
読みたくて、本屋をブラついていたら、石田衣良とか馳星周とか恩田陸と
か僕が比較的好きな作家が参加していたこの本が目に飛び込んだから。
ホラーだなんて思わなかったし。
鈴木光司が参加している時点で気が付くべきだった。どこかで聞いたこと
ある名前だなぁと引っかかっていたのだが、鈴木光司って「リング」とか「ら
せん」を書いてるホラー界の新鋭なんだそうだ。
しかし、この本に限って言えば鈴木光司の作品はまったく怖くなかったし、
恩田陸の作品はエグいだけで訳わかんないし、石田衣良と馳星周に至って
はどんな作品だったか記憶にすら残っていない。
ただただ浅暮三文の作品だけが強烈に残っているだけだった。
いや、正確にいうと作品が印象に残っているというよりは、悪魔の召喚方
法とそのイメージが強烈に脳裏にこびりついていて、午前零時に一枚の
鏡すら見たくないというくらい僕の心に傷跡を残したのだった。
- 感想投稿日 : 2011年8月4日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2011年8月4日
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