フリークス (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2011年4月23日発売)
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本棚登録 : 2795
感想 : 231
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五、六年前に購入して積んでいたものをようやく消化。綾辻行人作品はミステリを手当たり次第に読んでいた時期にいくつか読んだことがあるような気もするが、何を読んだか覚えていない程度。
最近翻訳小説ばかり読んでいたので文章があまりにも読みやすく少し感動した。言葉運びのテンポもいい。描写は比較的さっぱりしており、テーマに反して口当たりが軽く、短編ということも相まって(そして三作品集めても一冊が非常に薄いので)サッと読める。

短編三作からなる連作集。いずれも舞台は同じだが各話に直接的な繋がりはない。
本屋で表紙買いしたため事前情報なく、単なるサスペンス小説のつもりで読んでいたところ、まず一作目の叙述トリック的結末にパンチを食らう。そういえばこの人ミステリ作家だった。それもあり二作目、三作目はつい穿った見方をしてしまい、結末は予想通り。一作目のパンチが良かっただけに、短編という短いスパンで同じ手を繰り出されるとネタが読めてしまうのが辛いところ。
ただ、ネタは割れつつも三作目「フリークス」ではきちんとした「解ける謎」が胡乱な舞台設定(乱暴な言い方をするなら単なる妄想)の中にあったところは大変良かった。舞台自体を「これは何か?」と考える線とは別に、その舞台の中に秩序立ったフーダニットが仕込まれており、面白かった。
一点、フリークスの「探偵」の正体(本作において正体という言葉を使うのも野暮ではあるが)は、地の文の挙動の描写などから「(物理的に)鏡に映った主人公自身」だと思ったのだが、主人公も探偵も指の欠損箇所はどちらも左手である。鏡は作中作でも登場しており、特に拷問部屋で大鏡が粉々に壊されていた描写は意味深に感じたが、主人公が鏡と対話しているなら探偵の欠損は右手になるかと思うので、結局主人公は一作目の患者のように単なる幻覚と会話していただけなのだろうか。
他人の考察を読み漁りたい作品である。面白かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年9月19日
読了日 : 2021年9月19日
本棚登録日 : 2021年8月17日

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