災害がほんとうに襲った時――阪神淡路大震災50日間の記録

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  • みすず書房 (2011年4月21日発売)
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「総じて、役所の中でも、法律を墨守する者と現場のニーズに応えようとする者との暗闘があった」(p.49)

・平時において法を遵守することは極めて常識的な事柄に属するが、危急の事態においてはこの「常識」がいかに足手まといとなることか。それよりも、その場その場で最優先課題をしっかり見定め、その解決のためには法の目をくぐることすら厭わなかった者のほうが結果的に多くの人々を救ったのである。「有効なことをなしえたものは、すべて、自分でその時点で最良と思う行動を自己の責任において行ったものであった」(p.41)。そして、「災害においては柔かい頭はますます柔かく、硬い頭はますます硬くなることが一般原則なのであろう」(p.78)。

・阪神大震災後、貨幣経済の崩壊とともに共同体感情が生まれ、そして貨幣経済の復活にやや遅れて共同体感情が消滅したという。この両者の関連性についての仮説は実に興味深い。3.11後のいわゆる「絆」の発生と消滅についても似たようなプロセスが見られたことを思い出した。

・「総じて、内部からみた外部と外部からみた内部とが次第に別ものになってゆく。これが時間がたつにつれて起こるもっとも大きな食い違いかもしれない」(p.134)。この認識の自覚は、3.11後を語る者にとって、他のあらゆる認識に先立つべきものだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時事評論・エッセイ
感想投稿日 : 2013年8月26日
読了日 : 2013年8月26日
本棚登録日 : 2013年8月26日

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