窮鼠はチーズの夢を見る (フラワーコミックスα)

著者 :
  • 小学館 (2009年5月8日発売)
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本棚登録 : 2714
感想 : 220
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 男子であり、オタク的な文化・嗜好に寄っていないってこともあり、「BL」というモノがいまいちわからないでいた。今回、BLの師匠に王道な作品を教えてもらったので読んでみた。

 BLとはボーイズラブ、男性の同性愛をモチーフとした小説やコミックのことをいう。BLといった場合の読者は、同性愛者ではなく、主に女性層をターゲットとしている。「やおい」と同義と思っていたが、どうやら少し違う。「やおい」はパロディや同性同士のエログロ、インモラルな描写などが伴い、主に同好の士を対象とした作品群であるのに対して、BLは商業的でオリジナル作品といった側面が強く出ている。両者に明確な区分はなく、「やおい」作品をBLという言葉で代用することも多いようだ。いずれも“腐女子”と呼ばれるユーザー層がターゲットで間違いないだろう。

 で、『窮鼠はチーズの夢を見る』である。結論から言えば、ちゃんと面白かった。男同士のセックスが登場するレディースコミックの作品であるが、しっかりした恋愛ドラマじゃないか。

 大伴(男)は、大学時代の後輩である今ヶ瀬(男)にある弱みを握られ、【キスまで】という条件付きでカラダを弄ばれる。大伴は妻のいるノンケで、今ヶ瀬はカミングアウトしていないゲイ。彼は大学時代から大伴のことが好きだった。大伴にその気はないが、妻との関係は疎遠になっており、次第に今ヶ瀬に惹かれていく。連作となる『俎上の鯉は二度跳ねる』で完結するのだが、性別を無視して物語を見れば、あちこちに寄り道をしながら関係を築いていく王道の恋愛ドラマである。

 とはいえ、本作はレディースコミックかつ同性愛モノだ。男性が読むにはなかなか骨が折れるというか、心が折れるというかw、ある程度の強い意志が必要な作品かと思う。本作に登場する男は少女マンガの中の“男性”で、ボーイッシュな女性と基本的に見分けがつかないぐらい、華奢でこぎれいでヒゲひとつ生えていない中性っぷりなので、なんとか耐えたw。

 女性向けのエロコミックをたくさん読んだわけじゃないが、基本的に男性向けのエロコミックとは視点が違うように感じる。男性向けのエロ作品は、行為による結果、反応する女性を中心に描写された一人称の視点であるのに対し、女性向けエロ作品は、行為自体の描写は俯瞰した視点で、する側とされる側の感情の描写が入り交じる傾向にあるように思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 恋愛
感想投稿日 : 2011年8月18日
読了日 : 2011年8月18日
本棚登録日 : 2011年8月17日

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