宗谷名人が、音の無い世界に暮らす人であったことが、
自然に描かれています。
恐らく勝負のプレッシャーや繊細さからくる
難聴なのかもしれませんが…。
名人と桐山くんの、静かな心の繋がりが美しかったですね。
しかしむしろこの巻の読ませどころは棋匠戦。
柳原棋匠と島田八段の熱戦が素晴らしかったです。
なにも背負ってこない人生は、気が楽ですが薄い。
たくさんの事を背負いつくして来た人生は、
重く、本人には焦土しか見えなくとも、
その後には緑が芽吹きます。
まだ柳原棋匠のところに追いつくまでには、人生の年数は
まだまだですが、重いばかりでなにも残っていない自分の
人生を思うと、惨めで涙がこぼれそうでした。
そうして、涙などでどうにかなった気になる、自分もイヤで。
壊れかけた身体にもこころは瑞々しいまま宿るかもしれないし
老いていても燃える火は誰もが自分なりに持っている。
どんな、惨めなひとも、素晴らしい業績を持った人も
人生を生き抜いていくっていうことは、熱く、苦しく。
誰かに軽んじられるなどということは許されない。
そんなことを思いました。
ああ、それからもうひとつ。
川本家のほんわりした風景が挟まれているのは一種の
清涼剤のようなものですが、二海堂くんと桐山くんの
「名前のつく技」の場面など、ふと優しい風が吹く場面が
あるのがよかったです。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
コミックス
- 感想投稿日 : 2014年3月26日
- 読了日 : 2014年3月26日
- 本棚登録日 : 2014年3月26日
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