アンソロジー おやつ

  • パルコ (2014年2月1日発売)
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感想 : 84
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この本をお読みになる際は、お手元にお好きなおやつを
ご準備の上、読み始められることを強くおすすめします。

あくまで、スイーツじゃなくって「おやつ」を。

夜中に眠れず読み始めたら、最初が森茉莉さんの

「シュー・ア・ラ・クレーム」

で、シュークリームが食べたくて食べたくて困りました。
皮がぱりっと焦げ目がついてて、中にはバニラビーンズの
しっかり効いたカスタード。

袋に入ってるようなじゃなく、紙の箱に入ってて
ケーキ屋さんで頂いて帰ってくるような。
食べる時も無論、お皿をちゃんと出してダージリンと一緒に。

夜中にコンビニに行くのも怖くて。
で、結局どうしたか。

翌日、家族にせがんで、箱に入ったシュークリーム…。

カスタードと、ちょっと贅沢した気分でチョコレートの
シュークリームを、買ってきてもらいました。

お紅茶淹れて、食べれば大満足、という仕儀で。

古めかしい文が多いというご批評もお見受けしましたが
写真の雰囲気がレトロなのも、おそらくこの本が、
「スイーツ」のエッセイ集ではなくて
「おやつ」についての語りの本だから、こうなったのでは。

雑誌やネットの情報を見て、物見高く試しに行く、そのくせ
二度は食べない「スイーツ」ではなくて。

ゆったりと、あるいは賑やかに。
誰かの手によって用意された、心和むおいしい味。
繰り返し味わって、話したり、静かに頂いたり、する
「おやつ」がまだ用意されていた頃を活写すると
こういう時代背景のイメージ・写真になるのではないかと。

私はそう思います。

どっちが悪いというのではなく、求めてる方向性が
同じケーキ一個にしても、食べる時の姿勢とか
空気感が違うと思うのです。

手の込んだスイーツを、おしゃれして食べに行く
それが悪いのではなく、それは「おやつ」とは
ちょっと違うから。

森村桂さんの文章とか、森茉莉さんのとか
もともと読んでたものも懐かしく、開高健さんや
獅子文六さんの文章はお初で、その滋味に唸らされたり。

悪甘くなくて、気取らない。
「おやつの時間」
もう一度復活、させてみようかな?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年9月6日
読了日 : 2014年9月6日
本棚登録日 : 2014年5月26日

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