知ってはいけない 隠された日本支配の構造 (講談社現代新書)

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  • 講談社 (2017年8月17日発売)
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今日の書評は「知ってはいけない 隠された日本支配の構造」矢部宏治著。在日米軍と日本国についての書籍です。

まず、米軍基地はアメリカが日本中「どこでも作れる」ということを著者は主張する。たとえば、東京のまさしく「ど真ん中」である六本木と麻布にそれぞれ非常に重要な米軍基地(「六本木ヘリポート」と「ニューサンノー米軍センター」)があることである。

また上記のようなことは、外務省がつくった高級官僚向けの極秘マニュアル(「日米地位協定の考え方増補版」1983年11月)のなかに

〇アメリカは日本国内のどんな場所でも基地にしたいと要求することができる
〇日本は合理的な理由なしにその要求を拒否することはできず、現実に提供が困難に場合以外、アメリカの要求に同意しないケースは想定していない

と言う見解が、明確に書かれている。つまり、日米安全保障条約をむすんでいる以上、日本政府の独自の政策判断で、アメリカ側の基地提供要求に「NO」ということはできない。そう日本の外務省が認めているのだ。

さらにこの話はもっとひどい続きがあって、この極秘マニュアルによれば、そうした法的権利をアメリカが持っている以上

〇北方領土の交渉をするときも、返還された島に米軍基地を置かないというような約束をしてはならない。

したがって、現在の日米間の軍事的関係が根本的に変化しない限り、ロシアとの領土問題が解決する可能性は、じつはゼロ。すなわち、ロシアとの平和条約が結ばれる可能性もまたゼロである、と筆者は主張する。

日本の空で、日本の航空機が乗り入れていけない空域があります。たとえば、「横田空域」というものだ。

横田空域は、東京都の西部にある米軍・横田基地が管理する空域だ。皆さんは「米軍基地は沖縄だけの問題でしょ?」と思われるかもしれないが、東京の場合、その境界を駅でいうと、上板橋駅、江古田駅、沼袋駅、中野駅、代田橋駅、等々力駅のはぼ上空を南北に走っている。

この境界線の内側上空でなら、米軍はどんな軍事演習をするのも可能だし、日本政府からその許可を得る必要もない。2020年から横田基地に配属されることが決まっているオスプレイは、すでにこの空域内で頻繁に低空飛行訓練を行っているのだ。

そして、私たちが本当に注意しなければならないのは「横田空域等の巨大な米軍の管理空域について、国内法の根拠はなにもない」という驚くべき事実である。(「日米地位協定の考え方 増補版」)

その謎を解く手がかりは、もうひとつの重要な米軍管理空域だった沖縄の「嘉手納空域」(2010年に日本側に「返還」)を見ればわかる。

嘉手納空域は沖縄本島の半径90キロメートル、上空6キロメートルに広がる空域である。つまり、嘉手納空域とはつまり沖縄本島の上空はすべて米軍に支配されていたという意味である。

しかし「お前嘉手納空域は「返還」されたではないか?」と言う方もおられるであろうが、嘉手納空域に代わって新たに「米軍優先空域」が、ひそかに設定されていたのである。

その名を「アライバル・セクター(着陸地域)」という。沖縄の場合、米軍・嘉手納基地を中心に、長さ108キロ、幅36キロ、高さ1200メートル(高度600メートルから1800メートルまで)の大きさを持つ空域である。

これは、嘉手納基地や普天間基地に着陸する米軍機の安全を確保するという口実で、このような空域が、嘉手納空域の返還と同時に新たに設定されていた。

私たち観光客が、いまだに那覇空港に到着するとき、危険な低空飛行をしなければならないのも、沖縄本島およびその周辺の上空は、高度600メートル以上のほぼ全域が、この巨大な米軍優先空域になっているからである。

それでは横田空域などの本土の空はどうなのか?残念だが、私たちの眼には見えないだけで、本土でもやはり上空すべてが米軍に支配されている。

日本の上空には8か所の「低空飛行訓練ルート」がある。2011年には、この訓練ルートで年間1500回以上の軍事演習が行われており、さらに翌2012年からはこの回数に、普天間基地に配備されたオスプレイの訓練回数が加わっている。

しかも実際には、米軍機がこうした各地の訓練ルートにたどりつくまでには、日本中のいろいろな場所の上を飛んでいくわけだから、事実上、米軍機は日本の上空全体を自由に飛ぶことができるのだ。そして訓練ルートについたら、そこで低空飛行訓練をする。

いったいなぜ、そんなことが可能なのか。その理由は、米軍は沖縄の上空に設定したような優先空域を、日本全土の上空にいつでもどこでも設定できる権利を持っているからである。

「まさか」と思われるかもしれないが、これにも確かな根拠がある、国土交通省航空局に収録されている資料に、米軍が自分たちの軍事演習にあわせて「移動型アルトラブ」と呼ばれる、一定の幅と高度をもった立体的な「臨時専用空域」を日本全土の上空に次々と設定している事実がある。

つまり「日本政府は、軍事演習をおこなう米軍機については、優先的に菅制権をあたえる」という、日本の国民は誰も知らない日米合同委員会での密約に基づくものなのだ。

沖縄だけでなく、「日本の空」が戦後70年以上経ったいまでも、完全に米軍に支配されているということは、じつは日本の法律の条文にはっきり書かれている「事実」だからである。

すなわち:航空法特例法 第3項
「前項の航空機(=米軍機と国連軍機)については、航空法第6章の規定は(略)適用しない」

ここで「航空法第6章」とは航空機の安全な運航について定めた法律だということだ。つまり、
「離着陸する場所」
「飛行禁止区域」
「最低高度」
「制限速度」
「飛行系計画の通報と承認」
など、航空機が安全に運行するための43ヵ条もの条文が、すべて米軍機には適用されないことになっている。

要するに、もともと米軍機は日本の上空において、どれだけ危険な飛行をしてもいい、それは合法だということだ。

この条文のもとで米軍は、1952年に選良が終わった後も変わらず日本の上空で、何の制約も受けずに飛ぶ権利を持ち続けた、そして、それから60年以上たった現在に至るまで、この条文はひと文字も変更されていない。

これらも見ても1952年の「日本国独立」や1960年の「安保改定」が、いかに見せかけだったものか分かる。

とここまで本書のさわりを書いたが、在日米軍と日本の関係を知るには、一般の日本人には未知の事実が詳述されている。興味を持った方はぜひ本書を手に取って欲しい。本ブログ以上に議論は本所ではもっともっと展開されていきます。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 政治
感想投稿日 : 2017年10月28日
本棚登録日 : 2017年10月28日

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