非在 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店 (2005年8月25日発売)
2.98
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本棚登録 : 145
感想 : 20
3

嵐による遭難、たどり着いた目的の地、そして帰るべき手段も食料も失ったサークル一行。
極限状態の中で、思いもかけない心理状態に陥っていく人間の弱さが露呈していく。
閉ざされた孤島での連続殺人を描いているクローズド・サークルものである。
海岸に流れ着いた1枚のフロッピーの中に綴られていたのは、驚くべき内容だった。
いたずらかもしれない…拾った猫田は該当する大学のサークルに確認をとる。
すると行方が知れないメンバーがいるという。
これは本当に助けを求める知らせかも。
そう思った猫田は警察に連絡を取り捜索が始まる。
だが、捜索に向かった島には彼らの痕跡はなかった。
歴史、民族学、そして自然科学。
さまざまな分野の薀蓄が詰まっていて、それを読むだけでも楽しかった。
後々になって「あれはそうだったのか」と思う場面も数多くあり、先の展開が読みにくいところも気にいった。
学術的な説明部分は苦手な人もいるかもしれないが、興味はあるけれど詳しくはないという人は興味深く読むことができると思う。
ただ、鳶さんこと鳶山久志が登場するまでは話が進まないため引きが弱いように感じた。
鳶さんが登場してから物語はグッと加速し、それ以降は謎解きへ一直線へと進んでいく。
ミステリーが好きな人にとっては、中盤から後半にかけて事件の大筋が見えてくるかもしれない。
何よりも、猫田たちのすぐ近くで遺体となっていた男の死因が、あらたな可能性として提示され驚いた。
「なるほど」と。
あまり本筋とは関係のないようにみえる描写も、気がつけば重要な意味を持っている。
さらっと読み過ごしていたため、結局戻ってその場面を確認したりしたことが、ミステリー好きとしてはちょっと悔しい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2017年4月26日
読了日 : 2017年4月26日
本棚登録日 : 2017年4月26日

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