万能鑑定士Qの事件簿 I (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2010年4月24日発売)
3.63
  • (341)
  • (754)
  • (736)
  • (142)
  • (23)
本棚登録 : 5935
感想 : 609
4

驚くほどに天然で通知表にはオール1が並んでいる。
ミケランジェロをキリマンジャロと解答し、都道府県や県庁所在地は北海道と沖縄くらいしかわからない。
突き抜けた落ちこぼれなのだが、正確は底抜けに明るく前向きだ。
たったひとり、上京した莉子を迎えたのは厳しい現実だった。
やがて瀬戸内陸と出会った莉子は、「勉強の仕方」を教わり徐々に知識を身につけていく。

莉子のキャラクターがとにかく好きだ。
週刊誌の記者なのに押しが弱く人の良い小笠原もいい。
ふたりのキャラクターの個性が、いい具合に絡み合ってバランスがとれている。
第1巻では嫌な印象しか残さない葉山警部補の、いかにもな設定が面白い。
けっして推測を挟まず、自分の鑑定結果だけを武器に真相に迫っていく莉子。
純粋さが足を引っ張ることがあっても、彼女の無垢な魂は曇ることはない。
真っすぐに物事を見つめることができたからこそ、たどり着いた哀しい真実。
数多くのことを学ばせてくれた瀬戸内。
特別な才能はないけれど莉子を支えようとする思いは強い小笠原。
そして、真っ白な紙が染まるように知識を急激に取り込んでいく莉子。
哀しい結末にはなったけれど、多くのことを学ばせてくれた恩人への思いは莉子の中にしっかりと残っている。
シリーズ化されているので、次の巻を読むのがとても楽しみだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2017年3月8日
読了日 : 2017年3月8日
本棚登録日 : 2017年3月8日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする