犯罪記録、週刊誌報道、手記。そして供述調書。
取調べや取材、犯人による手記によって徐々にひとつの犯罪の形が見えてくる。
しかし、同じような内容が繰り返されるくどさに、どうにも付いていけなかった。
何を言いたいのか。
それとも、この繰り返される内容の中にこそ隠されたテーマが眠っているのか。
最後まで読んでもよくわからなかった。
「迷宮」というタイトルのように、まさに活字の迷宮に迷い込んだような居心地の悪さがずっとつきまとった。
殺人事件であることは確定している。
ならばそこには必ず被害者がいて加害者がいる。
犯行現場が特定され、犯行手順が明らかになっていく。
ここまでは事実の積み重ねによって解明されるだろう。
捜査に科学的な手法が取り入れられている現状では、ここまでの事実はほぼ動かされることはない。
しかし動機となるとどうだろう?
人の心の内は形として見ることは出来ない。
犯人が語る、過去に語った、そのひと言ひと言を読み解くほかはない。
受け手は自分なりに理解しようとする。
そこにそれぞれの解釈が入り込む余地ができる。
取調べをした刑事の、取材をした記者の、それぞれの解釈が加わっていく。
ひとつであるはずの真実は、いくつもの違った姿を持つようになる。
迷宮の果てにたどり着いたのはそんな考えだった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリー
- 感想投稿日 : 2017年3月23日
- 読了日 : 2017年3月23日
- 本棚登録日 : 2017年3月23日
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