君がいなくても平気 (光文社文庫 い 35-8)

著者 :
  • 光文社 (2011年10月12日発売)
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感想 : 43
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主人公・水野勝は携帯電話の周辺機器の開発チームで働く独身男性だ。
業務提携先から出向してきている同じチームの北見早智恵とつきあっている。
特別に早智恵のことを愛しているわけではない。
彼女もなくひとりでいるのも寂しすぎるし、嫌いなタイプでもない。
ただ今が楽しく過ごせればいいと思っていたし、早智恵も同じように考えていると水野は思っていた。
どうしても許せないことがある。
悪意があろうとなかろうと、けっして許さない。
無念の死には無念の死で償ってもらうしかない。
どこにスイッチがあったのだろう。
誰かを殺そうと心の中で殺意のスイッチを押した瞬間から、人は狂っていくのかもしれない。
一緒に食事をして笑顔で会話をする。
人間の感覚というのは、過度の緊張が続くとマヒしていくのだろうか。
いま、この瞬間に目の前にいる人が殺人犯かもしれない。
自分ならそんな状況にはとても耐えられそうにない。
恋人が殺人犯だと知りながら何も知らないふりを続ける水野。
人を殺したその手で恋人にすがり不安そうに振る舞う早智恵。
本気でないとしても恋人として過ごしてきた時間があるのに、どうして相手を徹底的に騙し通せるんだろう。
相手への罪悪感は?
水野や早智恵ふたりがあまりにも見事に感情をコントロールするので、とても怖くなってしまった。
たった1枚の紙切れから偶然犯人がわかってしまった水野。
彼なりに考え、自分の人生を守るためにもっとも損をしない選択・・・証拠品を焼き捨ててしまう考えの浅さも苦手だ。
「でも、君がいなくても平気だ」
この意味がどうしてもわからない。
死んでいく者が望んでいるだろうことを言ってあげた思いやりなのか。
それとも本心なのか。
どうしてもわからない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2017年3月2日
読了日 : 2017年3月2日
本棚登録日 : 2017年3月2日

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