この物語は主人公である料理人・澪の成長の物語である。
同時に、江戸時代の食生活を描いてもいる。
けっして今のように贅沢な食生活を庶民は送っていたわけではない。
どちらかというと日々の暮らしに追われ、それでも季節に木々に幸せを感じたり、ささやかな喜びを生きる楽しみにしていた者が多い。
彼らにとって、手が届く代金でとびきり美味しい食事ができるつる家は、大切な場所となっていく。
身分制度が厳しかった江戸時代。
好きだからといってすぐに結婚できるわけではない。
商人には商人の、武士には武士の、それぞれの立場で結婚によって得られるメリットは、無視できないものだった。
未来を左右する重大事項でもあったのだ。
大店の一人娘である美緒には、伊勢屋ののれんを守っていく義務と責任がある。
小松原には先祖から引き継いだ家名を守る使命がある。
好き勝手に縁組の相手を選べるはずもない。
人には添うてみよ、という言葉がある。
意に染まぬ相手と結婚しなければならなかった美緒も、相手への想いを押し殺そうとする澪にも幸せになってほしいと思う。
巻末にある「澪の料理帖」は楽しみのひとつだ。
次はどんな料理が登場するのか。
澪の恋はどうなってしまうのか。
期待と不安を胸に次巻を読み始める。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
時代小説
- 感想投稿日 : 2017年5月17日
- 読了日 : 2017年5月17日
- 本棚登録日 : 2017年5月17日
みんなの感想をみる
コメント 1件
nejidonさんのコメント
2017/05/18