珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社 (2014年3月24日発売)
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本棚登録 : 3823
感想 : 289
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関西バリスタ大会を舞台にした謎に迫る物語で、これまでとは違い長編になっている。
長ければ良いというものではないけれど、長編になっても美星とアオヤマを取り巻く世界観は変わらない。
二人のもどかしくなるほどの距離感も、美星の珈琲への思いも、相変わらずな藻川マスターも、物語の中でいつもの姿を見せてくれた。
長編になったことで変に間延びした出来になっていたらどうしよう・・・そんな不安もあったけれど、ミステリーとしての形にきっちりと仕上がっていた。
過去の大会で起きた異物混入事件が今回の大会にも影を落としていく。
いろんな思惑があったとはいえ、何故その時にはっきりとした形で決着をつけなかったのか。
開催者としての体面もある。
過去の栄光と現在の闇との狭間で迷っていく魂がいる。
自分のしでかしたことの責任を取らずに平然と振る舞う人間がいる。
何も解決されないままなかったことのようにされた事件は、終わらないままに時を経て再び顔をみせる。
美星の推理の果てに明らかになったものは、やりきれない現実だった。
もしもあのとき・・・。
そんなふうに起きてしまったことを悔やむことは誰にもあるけれど、それでも、もしもあのとき・・・と考えずにはいられない。
たとえわずかでも希望があるのなら、それを信じて進むしかないのかもしれない。
だって、明日も生きていかなければならないのだから。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2017年4月11日
読了日 : 2017年4月11日
本棚登録日 : 2017年4月11日

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