ダヤンのたんじょうび (DAYAN’S COLLECTION BOOKS)

著者 :
  • ほるぷ出版 (1993年6月1日発売)
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感想 : 17
5

突然ですが、
あなたは、あなたが生まれた日のことを
覚えていますか。

では、お子さんのいる方は、
あなたのお子さんが生まれた日のことを
覚えていますか。

最初の質問については、
ご両親からたくさんその日の話を聞いていた方は、
ご両親の語ったストーリーによって覚えている
と答えられるかもしれませんね。

自分の記憶でYesと答えられる人は、稀有な方でしょう。

でも、後者の質問については、
お子さんのいる方は
たいてい覚えているのではないでしょうか。

だって、特別な日ですもの。

さて、ダヤンのたんじょうび。

『ダヤン、わちふぃーるどへ』をお読みになった方ならば、
その日付、時間、エピソードは、しっかりと刻まれていることでしょう。

ところが、それをしっかり刻んでいるのは、その誕生を見守った方であって、
当の生まれた本人は、それを聞かされない限りは知らないのですね。

ダヤンは、生まれた日のことをリーマちゃんに教えてもらう前に、
わちふぃーるどに来ていますから、自分の誕生日のことは知らないわけです。

ちなみに、『ダヤンの長編ファンタジーの世界』シリーズでは、
第3巻の『ダヤンと時の魔法』で、
ダヤンは、リーマちゃんに再会し、生まれたときのエピソードを聞かされるのです。

  ねえ、ダヤン。あんたが生まれた時の話をしてあげる。

  その時のこと、わたしよく覚えてるの。

  風も雨もみんなしてあんたが生まれるのを見にきてね。

  稲妻があんたの名前を呼んだの。『ダヤン!』ってね。

  ああ、ダヤンは特別な猫なんだってその時思ったのよ。

いつもジタンと比べられることを気にしていて、

そして、誰もが過去への旅立ちの主役は、
なぜジタンではなくダヤンなのかということを思っていて、

ダヤン自身も、自信を失い、行きたくないなぁと思っていたときに、

このリーマちゃんの語りは、ダヤンを元気にして、やっぱり行くと思わせました。

誰にでもある自分だけの特別な一日。

それが誕生日です。

さて、このときもダヤンは、自分の誕生した日のエピソードは聞いていますが、
自分が何月何日の何時に生まれたかは聞いていないのです。

これはまた別のお話、なのですね。

ダヤンの世界は、長編ファンタジーシリーズがあとから生まれることにより、
一本の幹を持つことになりました。

それ以前から小さなおはなしがぽこぽこと生まれていました。

それが、コレクションブックシリーズです。

最初は「コレクションブック」として12巻でまとめられ、
その後、番外編も入れて、part1:7巻、part2:7巻として再編されたようです。

これらは、長編と同時進行で、どんどん増えていっていたわけですが、
ファンタジーとしての深みと象徴をたくさん含んでいる長編とは違った楽しみ方ができます。

長編はストーリーで読ませますが、
こちらは、かわいらしく印象的な絵が主役としての存在感を持った
心が温かくなる小絵本といった位置づけです。

本書の表紙の赤ちゃんダヤンのかわいいこと。

ダヤンは、わちふぃーるどにくるまで誕生日を祝うことを知りませんでした。

マーシィの誕生パーティーの帰り道、
自分にも誕生日があればいいなとジタンに尋ねると、
誰にでも誕生日はやってくるといいます。

それから、ダヤンは、誕生日を待ち続けました。

留守に来てしまうといけないからと出かけることさえしませんでした。

だけど、どんな姿でやってくるのかわからない。

ある日ジタンを訪ねて、真剣に聞くのです。

「たんじょうびって
どんなかお、してるのさ」。

それほどに、ダヤンは、「誕生日」を知りませんでした。

マーシィの誕生パーティーに参加していたのに、意味がわかっていなかったのですね。

ダヤンは、カシガリ山の魔女のところへ、誕生日を見つけてもらいに行きました。

3人の魔女の占いは、いかにも魔女チックでユーモラスです。

そして、魔女の占いにより、長編ファンタジー読者なら知っている、
あの日のあの時間がダヤンの知るところとなったのです。

ダヤンの誕生パーティーには、お客さんがいすに座りきれないほど、詰めかけました。

もう見開きいっぱいの仲間達のみっしり感は、ほほえましいばかりです。

ところが、ダヤンは、肝心なことを忘れていたのでした。

そして・・・。

この3人の魔女とダヤンを結びつける本書のエピソードは、
『ダヤンと時の流れ星』や『ダヤンと夢の約束』にも
つながり、繰り返されます。

このエピソードが繰り返されるのは、
このダヤンのシリーズ全体が、時をテーマにしたものであることを
しっかり象徴しているからでしょう。

誕生日は、誰にでもあるけれど、
あなただけの特別な一日。

あなたが、その日、その時間に、
生まれたことの意味を味わい、

あなたが生まれたこと、
あなたの大切な人が生まれたことに
感謝する日。

ダヤンと一緒に、お祝いしませんか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書
感想投稿日 : 2010年1月4日
読了日 : 2010年1月4日
本棚登録日 : 2010年1月4日

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