本作を書き終えた沢木耕太郎は、当時20代後半。これだけ精緻なルポをその若さで書き上げたことに驚く。
山口二矢を凶行へと駆り立てた、青年特有のパトスは誰もが持ちうるものだ。しかし、それは浅い人間観に基づいた極端なユートピア思想であって、たとえばそれは日本赤軍のそれと根っこでは繋がっているように思える。
チェ・ゲバラを無批判に支持する風潮がいまだに世界中にあるように、政治の季節に激しく命を燃やして散っていく若者をヒロイックに持ち上げるのは日本だけではない。ただ、彼らは死んでおしまい。多くは終わりなき日常に絶望しながら生き続ける。
そういう意味で、沢木耕太郎が浅沼稲次郎のもう一人の主人公に据えた意義は大きい。ヒロイズム礼賛では世の中は変わらない……と思うのも自分が年を食ったからか?
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- 感想投稿日 : 2015年7月22日
- 読了日 : 2015年7月22日
- 本棚登録日 : 2015年7月22日
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