イラク戦争のバクダッド陥落を撮りきった宮嶋氏の取材記録。上下巻。
イラク入国査証入手の苦労やその手練手管、バクダッドの情報省との付かず離れずの騙し合いなどが詳細に且つオモロク描かれる。派手な前線に肉薄するまでの地道な準備、冷静な判断と動物的勘の積み重ねが丹念に書かれていて興味深い。戦争報道稼業を志す若者にとって教科書のような御本である。「ライトプレイス・ライトタイム」なるありがたい言葉も学べる。
そして、深く心に迫る。
宮嶋氏はバクダッド陥落という歴史的瞬間を目前に、何を撮るべきか分からなくなってしまった、という心情まで綴る。なんとも赤裸々な告白である。
さらに、宮嶋氏はバクダッドのホテルで米軍の戦車砲の至近弾を受ける。修羅場となった部屋に飛び込むのだがシャッターを切ることは出来なかった…。その時の心境を告白している。
この二つの条りは上下巻を通じて本書の白眉である。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2015年11月15日
- 読了日 : 2010年11月5日
- 本棚登録日 : 2010年11月5日
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