神童のハンス少年の青年までの軌跡を辿る作品。
作者のヘッセはドイツ人らしいが、美しい描写と表現を感じつつも、翻訳という代替え作業のなかでこぼれ落ちてしまう、コンパチ感はあると思う。
ハンスは天才だが、周りの大人立ち上った詰め込み教育によるプレッシャーで潰されていく、まさに車輪の下の存在であった。
作者自身の体験を色濃く描いているそうだが、ヘッセには母親の存在があり、ハンスにはなかった。それが、ヘッセとハンスの運命の分かれ目であり、作中でも父親の都合のよい解釈と共に、救いのない結末事態がヘッセの母親への感謝を描いていた所には、人間が文学を作る優位性を感じる。別にこれはテーマではないか。
己の苦悩を世に発信する行為の懺悔、罪滅ぼし、開き直りは羨ましい。
青年になるきっかけを恋愛から得たが、それも辛く苦しい体験の下拵えでしかなく、不幸への怒りは凄い。
また、水辺で足を滑らせて命を呆気なく落とすハンスの運命や境遇には憤りを感じ、神は未だ不在だと思い知らされた。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年1月3日
- 読了日 : 2016年3月27日
- 本棚登録日 : 2024年1月2日
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