集団不登校の中学生たちが、現状の既得権益を守りたがり変わろうとしない「大人」たちのつくる日本のシステムや価値観に異議を唱え、自分たち「子ども」の新しい国をつくるまでを描いた近未来小説。
主人公は『愛と幻想のファシズム』のように閉塞感を打ち破る当事者ではなく、主人公は30歳半ばのフリーの記者の第三者的な立場から語りで物語りは進んでいく。30歳半ばというのはちょうど日本的な共同体でぬくぬくとそれなりに生きている「大人」側でもある一方で、そのシステムに対して批判的である「子ども」側の側面もある。そこでこれから日本がどういうビジョンを持つべきなのかについて、二つの価値観の中で起こるある種の葛藤が表現されていて、それがこの作品の一番の魅力だと感じた。
2000年に書かれた小説なのでどうしても古びて見えてしまうところもなくはない。しかし、中学生がのちに北海道につくる彼らにとっての国は評価経済や環境への配慮、欲望の欠如など、今のネットなどで議論されている理想に近いものがあってとても刺激的だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本の未来
- 感想投稿日 : 2012年6月16日
- 読了日 : 2012年6月16日
- 本棚登録日 : 2012年6月16日
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