失楽園 上 (岩波文庫 赤 206-2)

  • 岩波書店 (1981年1月16日発売)
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感想 : 79
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「一敗地に塗れたからといって、それがどうしたというのだ?」名台詞ですね.旧約聖書の再話.上巻では地獄の描写が,下巻では蛇に変容する堕天使たちの描写が圧巻.
旧約聖書「創世記」エデンの園でイブを欺き知恵の実を食べさせたあの蛇の正体は地獄に突き落とされた嘗ての暁の明星ルシファーだったのだ!神への反逆は惨めな失敗に終わり,地獄へ幽閉されたが,ベルゼバブとの対話で復讐を誓い,勇んで地獄会議を主催する.ところが今や悪魔に堕した反逆天使どもは完全にヘタレている.こうなったら自分でやるしかないっしょってことで,今やサタンと呼ばれる反逆天使の長はできたての地球へ潜入するのだった.ひたすら神とその御子キリストへの賛美が語られているが,そこにはもうすぐ迫る時代へのミルトンなりの警戒というか危機意識があったのかもしれない.とりわけ,アダムが天使に対してもしかして地球が動いてるんですかと尋ねる場面があり,それに対する天使の答えが「いいじゃないか,どうだって」的なまとめ方をしており,コペルニクス以後の現実世界とキリスト教徒の世界観との不一致に狼狽しているのか.ダーウィン後になるとさらに苦しかったろう.

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学
感想投稿日 : 2017年5月2日
読了日 : 2017年5月2日
本棚登録日 : 2017年5月2日

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