こねこのぴっち (大型絵本)

  • 岩波書店 (1987年11月25日発売)
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本棚登録 : 719
感想 : 81
5

2013年7月の重版はスイスの初版本に色をあたって新規製版したもの。
旧版は緑と朱色にちかい赤だったものが、新版では青(藍)と赤になっていて、より絵が立体的になり奥行まで楽しめるようになっている。
特に夜のシーンの暗闇と月灯りはすばらしい。

子どものころに好きだった作品だが、私が持っていたのは「岩波子どもの本」シリーズの小さい版。
もちろん、こねこのぴっちの身体の線や物語は大好きだったが、今回新版を読み、今子どもに手渡すのであれば、新しい方にしたい。
まず、色目が明るく、全体の線がいきいきとして見えること。
白い部分=空白との差もはっきりしているからかもしれない。
あひるが池に向かうシーンの距離感、ぴっちが元気になり全員集合の場面のじょうろの反射の美しさ、表紙に描きこまれた登場動物たち、ぴっちをはじめ動物の骨格がわかる身体の線や重量感、みかえしのいろいろな表情のぴっちまで、線も色も奥行きも隠し絵も、楽しい。

旧版は、正方形に近い形で右開き、縦書きの文章という純日本風。
残念なのが、ぴっちが去っていく方向がページの括りと逆になってしまい、ストーリーの流れと絵の流れが合わない。
全員集合の場面も本の大きさに合わせて、一部分だけになっている。
これだけでも、残念すぎる。
時代背景として、低価格で良書をたくさんの人に手渡したいという苦肉の策だったのだろうけれど、現在においては残念なかぎり。
同じ本とは思えない。

フィッシャーは作品の中によく、夜を描いている。
人生は、昼と夜の両方の部分があり、夜は怖く、不安。
それに負けない気持ちを持ち、乗りこえることで、自信につながっていく。
センダックも夜を描く。

またフィッシャーは自分の経験を描いているとのこと。
おばあちゃんの焼くケーキ、奥さんが病気のときのベッドと枕。
それは日常の幸せ。

フィッシャーは教科書の挿絵も描いていたとのこと。
教科書を大事に考えることは、すべての子どもを大事に考えているということ。本を買ってもらえる環境でない子どもにもよい絵、物語に触れる機会を作っている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年9月5日
読了日 : 2013年9月5日
本棚登録日 : 2013年9月5日

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