勤勉は美徳か? 幸福に働き、生きるヒント (光文社新書)

著者 :
  • 光文社 (2016年3月17日発売)
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感想 : 13
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2019/12/29

著者はヒルティの「幸福論」を冒頭に引用し、仕事をしている時間を幸福に過ごすべきと主張しているが、そもそも幸福とは何かという議論が抜けているため、屋台骨がゆらいだちぐはぐな文章となっている。
三木清が語るように、幸福は人それぞれの尺度によって定義されるべきだし、ある人が仕事で感じる幸福感と、プライベートで感じる幸福感は全く種類が違うはず。
また、主体性がなければ幸福になれないとなぜ言いきれるのか。著者はそうなのかもしれないが、言われた通りにただその通りにやることが好きな人もいるはず。実際、自分の頭で考えるよりも、ただ言われるがままの方が考えなくていい分、楽であり、それが性に合っている人もいるだろう。
著者のように労働者の問題を一般化し続ける限り、個々の労働者の問題は救えないだろう。
また、奴隷がみんな不幸でローマ市民がみんな幸福だったかのような記述も浅はかではないか。韓国では芸能人の自殺が絶えないし、アメリカでは多くの資産家が精神科にかかっている。
転職力を高めることがビジネスマンとしての成功に近づくことには同意するが、それが幸福かどうかは各人の判断に委ねられるのではないだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会・経済
感想投稿日 : 2019年12月29日
読了日 : 2019年12月29日
本棚登録日 : 2019年12月29日

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