石積みの塔を造る者の話だ。ゆえにこれは我々の物語である。あっという間に塔を造る人、時間をかけてゆっくりと造る人。誰の目から見ても美しい塔は空に近いところまで高くそびえ、人々から喝采を浴び、歴史に刻まれていく。その反対に寝る間を惜しんで積んでいった塔が誰の目に止まることなく、価値のないものとして無惨に崩れ落ちていくことも当然あるだろう。途中放棄された塔や、塔以前に積み上げるための石の素材を荷車に積んで引き、必死で運んでいる人もいるかもしれない。
私は、この物語に希望を見出だすことはできない。ただ当たり前のような現実を突きつけられただけだ。だからこそ深く傷ついて、深く心に残る。
あとがきを読んでこれはみおさん自身が孤独の中、二年という歳月をかけて築き上げた塔なのだとわかって泣き崩れました。
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- 感想投稿日 : 2021年4月19日
- 読了日 : 2019年5月15日
- 本棚登録日 : 2021年4月19日
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