殺人出産 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2016年8月11日発売)
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生殖と繁殖、そして殺人。
偶発的な出産が減少して(愛があってもなくても、合意でも事故でも)、少子化が進んだ社会。10人産んだら1人殺せる制度「殺人出産」が確立されている。反道徳的なこのシステムは、この社会においてあまりに合理的。殺人を犯す予定の人が「産み人」。殺される予定の人は「死に人」。命をかけての殺意。そして、その行為が、人の繁殖を支えている。当然、産まれた子供は大切に育てられる。
村田さんの作品は、彼女の作り上げた虚構外の部分は、いたって現実的な描写で、常識と否の境界線を曖昧にさせる。そして、どの作品も数ページで彼女の世界観に引き込む。
主人公は、「産み人」となった姉を支えながらも矛盾は感じ、姉の「死に人」の胎児の為にか「産み人」となる決心をする。贖罪としての選択ではなく、この「殺人出産」の正常な世界の為に。

「清潔な結婚」
性別のくくりに囚われない仲の良い兄弟のような穏やかな日常、それが結婚に対する希望の夫婦。その家庭に持ち込まれない性行為の現実。
何を持って清潔とや。

「余命」医療の発達し、”死”がなくなり、自分で死期を選択するという社会。ショートで、軽妙な語り口からシュールな世界。現実でも、自然死はなかなか難しい。死がなくなることと、生き続けることは、矛盾をはらむのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説 
感想投稿日 : 2022年9月15日
読了日 : 2022年9月15日
本棚登録日 : 2022年9月15日

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