花のれん (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1961年8月17日発売)
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感想 : 136
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山崎豊子文学忌 1942.1.2〜2013.9.29 豊子忌
直木賞受賞作
大阪商人の気迫と根性で大阪一の興行師となった女性の一代記。
主人公の多加は、吉本興行の創業者・吉本せい。
愛人の上で死んだ夫の借金を背負うマイナスからのスタート。そこから、創意と工夫と根回し。そして、気配り、心付け。使うところには、惜しまず使い、興行でしっかり稼ぐ。
次々と繰り出される興行は、安来節の芸能化、真打落語家への采配、漫才への変革と、大阪の芸能の歴史の一端を担っていた様。
東京空襲の後、大阪から人を雇い毛布や食料を運び、落語家への見舞いに回るなど、思いたったら、行動しないと気がすまない。
最後は戦争により、多くのものを奪われたけれど、やり切った人と読みました。
素晴らしい女性だけれど、読んでて息苦しくなる程の仕事への情熱。ろくでなしの夫を白装束で送る意味はあったのか。ロマンスになりかけた男性に未練はなかったのか。一人息子とも気持ちは離れたまま。
痛快で、清々しくて、少し物悲しいさが残る女傑物語。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 直木賞
感想投稿日 : 2023年9月28日
読了日 : 2023年9月28日
本棚登録日 : 2023年9月28日

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