満願 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2017年7月28日発売)
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このところ、多くなっている連作短編集ではなく、作品のの背景、登場人物とそれぞれ個別のストーリーを持った短編集。時代は、昭和40年代から50年代位でしょうか。表題作含め、バラエティに富む六編。どの作品も、トリックではなく、その事件に関わった人達の深層心理を描くことが中心となります。
「夜警」
一人の若い巡査の殉死。彼の行動癖から、事件の違和感が生まれる。
「死人宿」
自殺者の多い山奥の温泉宿。昔の恋人を探し出した男。元恋人に自殺志願者の詮索を依頼される。
「柘榴」
美しい少女の倒錯した愛情。実母、妹さえも排除する。これが、好みですね。男性作家が、女性の深層心理戦書いているのは、全般的に好きですね。
「万灯」
日本のビジネスマンの仕事への執念。成就への行動は、思いがけぬ破綻を期す。
「関守」
都市伝説となる、悲哀漂う家族の関守。
「満願」
下宿先の女主人だった女性が起こした殺人事件。彼女が、そこまでして守りたかったもの。それに気が付いた下宿人だった弁護士。
際立ったキャラクターというより、均衡が破綻してしまった日常生活のトラブルを抱えた犯罪といった全作、魅力的な作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新潮文庫
感想投稿日 : 2022年6月19日
読了日 : 2022年6月19日
本棚登録日 : 2022年6月19日

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