満願 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101287843

作品紹介・あらすじ

「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、静かに刑に服したが……。鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴」、ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、「夜警」「関守」の全六篇を収録。史上初めての三冠を達成したミステリー短篇集の金字塔。山本周五郎賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 物語の振り幅が大きく、かつそれぞれ高クオリティ。 どんよりした曇り空のような短篇集です。
    どの話が好みかで その人の性格が分かりそう。
    ….私は….やっぱり「満願」かな!

  • 2015年「このミス」1位の作品。
    他にも受賞しているらしく「驚異の三冠、ミステリ最高傑作」の帯に惹かれて購読。
    作品は6篇からなる短編集。調べてみたら2010年~2013年にかけてそれぞれ単独で発表された作品の短編集との事。

    時代背景はどれも昭和40年~60年位で、暗い印象。読んでいる最中は古いアルバムの写真を見ているような感覚。全編ノスタルジックな感じがなんだか薄気味悪く、同時にスッキリとしない不快さが漂う作品だと感じた。
    全篇通じてその重たい暗い背景が最高のミステリーを感じさせているのだと感じた。
    藤子不二雄さんの「笑うセールスマン」やテレビの「世にも奇妙な物語」等を感じさせるような、言い様の難しい読後感だなと感じた。

    作品は全て単独で発表されていたからなのか完成度が凄い。また題材も全て違うため作者の力量の深さを感じる。
    どれも甲乙つけがたく最高傑作だと感じた。
    また近いうちに作者の別の作品も読んでみたい。

  • 6つのミステリー作品が収録された単独短編集。

    貫井徳郎3作品連読後、無性に米澤穂信を欲した。
    理由は不明。迷わず本棚から引っ張り出した。

    著者の作品は5作目だが、1番最初に購入した作品がこの満願だった。そう、読みたいと思える頃合いを待ち続けていたのだ。

    素直に感想から述べたい。

    今まで読んできた短編集の中でも、ズバ抜けてクオリティーが高く、最後の一文まで堪能した。
    いや、最後の一文こそ、読後に大きな爪痕を残す重厚感があり、著者作のボトルネックを読んだ時の衝撃が甦った。

    特に【関守】と『万灯』が善き。

    本作で著者作品5作目。
    今日今現在、米澤穂信作品で本作は私にとってはダントツの傑作だ。

    ミステリーがお好きな方で、まだ本作品に触れていないのであれば是非ともお勧めしたい。

    ただし、著者作品・古典部シリーズから入った方はご注意をば。

    本作に青春のカケラもない。
    あるのは苦い後味と、予想を上回る精神的ダメージである。

    しかし、著者の言葉選びと発するタイミングは、震えるほど気味が悪くて、心地悪くて、気持ちが良い。

    もはや次の読書作品は決まった。
    いざ、出発進行。

  • 優等生すぎる短編が6つもはいってお買得
    だけど人物設定を都度インプットする必要があるので毎回読み始めがしんどい
    マンガンときくと満貫(12000点)を想像するが、
    読了した人は満願成就を想像し、あの余韻に浸るのだろう


    • bmakiさん
      こんばんは(^^)

      人物設定を都度インプットする必要があるので毎回読み始めがしんどい

      ↑もうこれ、本当賛同します!
      短編はだか...
      こんばんは(^^)

      人物設定を都度インプットする必要があるので毎回読み始めがしんどい

      ↑もうこれ、本当賛同します!
      短編はだから苦手です。

      この本は面白かったですけど(*^^*)


      マンガンと言われたら、電解二酸化マンガンですねぇ〜。
      それ一択です(笑)

      電池屋さんなので(笑)
      2023/06/30
    • ganglionさん
      コメントありがとうございます
      短編は頭の切り替えがしんどくて…
      けど長すぎるとダレてしまう
      なんとも欲張りな読者です

      電池屋さんなんですか...
      コメントありがとうございます
      短編は頭の切り替えがしんどくて…
      けど長すぎるとダレてしまう
      なんとも欲張りな読者です

      電池屋さんなんですか?
      おっきい電池載ったEV車欲しい!!
      2023/06/30
  • このところ、多くなっている連作短編集ではなく、作品のの背景、登場人物とそれぞれ個別のストーリーを持った短編集。時代は、昭和40年代から50年代位でしょうか。表題作含め、バラエティに富む六編。どの作品も、トリックではなく、その事件に関わった人達の深層心理を描くことが中心となります。
    「夜警」
    一人の若い巡査の殉死。彼の行動癖から、事件の違和感が生まれる。
    「死人宿」
    自殺者の多い山奥の温泉宿。昔の恋人を探し出した男。元恋人に自殺志願者の詮索を依頼される。
    「柘榴」
    美しい少女の倒錯した愛情。実母、妹さえも排除する。これが、好みですね。男性作家が、女性の深層心理戦書いているのは、全般的に好きですね。
    「万灯」
    日本のビジネスマンの仕事への執念。成就への行動は、思いがけぬ破綻を期す。
    「関守」
    都市伝説となる、悲哀漂う家族の関守。
    「満願」
    下宿先の女主人だった女性が起こした殺人事件。彼女が、そこまでして守りたかったもの。それに気が付いた下宿人だった弁護士。
    際立ったキャラクターというより、均衡が破綻してしまった日常生活のトラブルを抱えた犯罪といった全作、魅力的な作品でした。

  • 短編集が苦手な私は、なぜ中身を見ず手に取ってしまうのだろう………。米澤穂信さんの初読み作品。
    (『氷菓』が有名だが、アニメを昔観たので小説は未読)

    本作は7編からなる短編集で一つ一つの物語に重厚感があり、なんとなく『世にも奇妙な物語』に似た印象を抱いた。ただ最後の短編でありタイトルでもある『満願』は時代設定が古いためか、ちょっと読みづらくて分かりにくい印象が少し残念。それ以外の短編は、ゾッとするオチで楽しめました。

    今だと米澤穂信さんの『Iの悲劇』や『黒牢城』などが人気だと思われるが、今の私にはまだハードルが高そうかなと小休止。

  • 6篇の短編集
    ジワジワと剣呑な空気が迫って来て、一気に不穏なラストへ引きずられました。誰の心にもありそうな隙間に、何かが入り込んで取れなくなり、行動をしてしまう。しかし、それは気味が悪く、ザラザラと後味が悪い。そんな感じでした。

    「夜警」ミスをなんとかしたい気持ちは誰にでもありそうだけど。後輩の性格に気づいていても見て見ぬふりもありそうだけど。
    「死人宿」確かに見ていた。が、気付けなかった。
    「石榴」美しい母娘。父娘。姉妹。この先、どうなるのだろう。そして、最後の一言にゾッとする。
    「万灯」仕事熱心すぎたことで、巻き込まれていく。そして、信じられないような状況で審判を待つ
    「関守」それぞれの事故の話が、こんな形で繋がっているとは。
    「満願」『酒に強いのも不幸だが、妻が立派なのは、なお悪い』殺人の動機にため息がでる。

    それぞれの登場人物に満願があるように思いました。だだ、満願成就に至ったのは、、、。

  • 米澤穂信さんの作品は初めて読む
    短編集なので読みやすかった

    特に好きなのは「柘榴」と「万灯」
    両方とも想像がつかないラストで、特に「万灯」の方はそう落とし込んだか〜凄いなぁなるほどねと感心した

    イヤミスなのに短編だからかスッキリ読める 男性作家が書くイヤミスってこんな感じなのね〜

  • 古典部シリーズ以外の、著者の作品を
    久しぶりに読んだ。

    同じ人が書いてるっ?笑
    と思えるくらい、世界が違くって、
    その世界観に、完全に引き込まれた。

    個人的には万灯がおすすめです。

  • 満願 米澤穂信 著

    米澤さん作品の初読了です。
    また、基本的に短編集は読まないです。
    長く物語の世界に入りたいからです。

    満願。短編集です。

    「やられました、、、」
    6作品、全て繋がりなく、さらに物語設定も、文体も、様々です。

    ------------
    ※抜粋
    ●夜警
    警察官の上司と部下。
    緊急連絡で現場に急行。一触即発の事態のため、踏み込む。
    部下は、犯人めがけて発砲するも、殉職。
    上司は、部下が発砲したこと自体への疑念が消えない。
    ------------
    ●関守
    毎年不審な事故死がある峠。
    記者は、都市伝説としての題材として現地取材へ。
    彼は取材で、衝撃の事実に辿りつく。
    ------------
    ●柘榴
    離婚調停の家族。子供は2人。父方は定職なく、扶養義務はおぼつかない。母方はアルバイト掛け持ちし、2人の子供を養う準備を行い万全の体制。
    家裁の判断は「父方」の全面支持。
    家族に「なに」が起こっていたのか?

    ------------
    【読み終えて】
    短編集の良さ。
    それは、起承転結が明確であり、次の物語に早く入ることができること。
    「満願」は、まさに、この小説となりました。


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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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