自然豊かな片田舎の少年ハンス。その天賦の才と勤勉さをもって、周囲の期待を一身に背負い、神学校へ入学する。
神学校でのハンスは、規律・学問という教育社会の車輪の下で苦悶する。詩人を望むヘルマンとの耽美的友情。彼の退学による孤立。ハンスは、精神的に疲弊していく。
田舎に戻り、機械工を目指す。労働への挫折感。見下していた同級生との葛藤。その中でも、製造という営みに人間らしさを見出しつつあった。
ハンスは、友人達との酒宴の帰路、溺死する。
若い頃読んだ時、ハンスは自殺の印象だったが、死因については、ふれられない。事故かもしれない。
再読してその理由は不要なのかと思う。
自伝的小説とのことだが、ハンスとヘルマン二人が、ヘッセを表現しているかと。ヘッセ自身は、神学校を退学し、詩人への道を模索するが、神学校という車輪の下に残された意識の破壊の表現と思えた。
ラストの場面は、印象的で、初読の後内容は忘れても、ミレーの「オフィーリア」に脳内変換されていたのだが、もう少し普通の川。
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読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
新潮文庫
- 感想投稿日 : 2022年3月4日
- 読了日 : 2022年3月4日
- 本棚登録日 : 2022年3月4日
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