些細なことから思わずエスカレートしすぎる、危うい女性たちを描いた短編集。
どのお話も現実にありそうなシチュエーションで始まるのですが、話は思わぬ方向に進んでいきます。
出てくる人たちの言動に意表を突かれ、笑いを誘われ、そしてその純粋さに切なくもなります。
「スナックせと」で働いていた女の子たちが、ママの誕生日に集まる話「せとのママの誕生日」は、「こちらあみ子」に収められていた「ピクニック」を思い出させてくれます。
「モグラハウスの扉」や、「父と私の桜尾通り商店街」は小学生の子どもたちが出てくるせいか、無邪気さが一段と増して、異様な雰囲気も漂っています。
「冬の夜」では、産婦人科の病室でカーテン一枚を隔てた、顔も見えず会話だけが聞こえる隣同士で、お互い勝手に想像をめぐらしているという場面があって、今村さんらしい視点だなと思いました。
今村さんの作品を読むのは3作目なのですが、読めば読むほど愛着が湧いてくるのです。
本当に不思議な作家さんです。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
今村夏子
- 感想投稿日 : 2022年2月20日
- 読了日 : 2022年2月20日
- 本棚登録日 : 2022年2月20日
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