父と私の桜尾通り商店街 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2022年1月21日発売)
3.34
  • (33)
  • (103)
  • (110)
  • (42)
  • (13)
本棚登録 : 1362
感想 : 123
4

些細なことから思わずエスカレートしすぎる、危うい女性たちを描いた短編集。
どのお話も現実にありそうなシチュエーションで始まるのですが、話は思わぬ方向に進んでいきます。
出てくる人たちの言動に意表を突かれ、笑いを誘われ、そしてその純粋さに切なくもなります。

「スナックせと」で働いていた女の子たちが、ママの誕生日に集まる話「せとのママの誕生日」は、「こちらあみ子」に収められていた「ピクニック」を思い出させてくれます。

「モグラハウスの扉」や、「父と私の桜尾通り商店街」は小学生の子どもたちが出てくるせいか、無邪気さが一段と増して、異様な雰囲気も漂っています。

「冬の夜」では、産婦人科の病室でカーテン一枚を隔てた、顔も見えず会話だけが聞こえる隣同士で、お互い勝手に想像をめぐらしているという場面があって、今村さんらしい視点だなと思いました。

今村さんの作品を読むのは3作目なのですが、読めば読むほど愛着が湧いてくるのです。
本当に不思議な作家さんです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 今村夏子
感想投稿日 : 2022年2月20日
読了日 : 2022年2月20日
本棚登録日 : 2022年2月20日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする