古道具屋を営む家に三姉妹の長女として生まれた麻子。
次女の七葉は素直に自分の意見を伝えられる子、逆に麻子はおとなしく、地味で目立たない子。可愛い七葉に、麻子はいつも引け目を感じていた。
小さい頃のきょうだいってどうしてあんなにくっついて遊ぶのだろう。もうすっかり忘れていたことを鮮やかに思い出させてくれる。
それから、中学時代の麻子の木月くんに対する淡い恋心と、失恋した時の状況がとてもリアルに伝わってきた。
決して力強くはないのに、心に沁みこんでくる文章が上品で心地よい。
大学入学と同時に家を離れ、就職先でもまれながらも強くたくましく変わってゆく麻子にすっかり心を持っていかれ、後半からは一気に読み進んでしまった。
靴のことを何も知らずに靴屋に配属され、懸命に働くところは、「羊と鋼の森」を彷彿とさせる。真面目でひたむきな麻子に好感が持てるし、エールを送りたくなる。
家族と恋愛と仕事と結婚、女性が辿る道をとても優しく丁寧に書き上げられた、素敵な作品だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
宮下奈都
- 感想投稿日 : 2021年7月28日
- 読了日 : 2021年7月28日
- 本棚登録日 : 2021年7月28日
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