ローマ人の物語〈9〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(中) (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2004年8月30日発売)
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カエサルが41歳で執政官になって、ガリア戦記途中までの話。ガリア戦記自体もすごいと思うものの、よく40までパッとしない状態で、いきなり三頭政治を成立させ、ガリア戦記を責任者として始められたな、と。しかも青年時代を振り返っても、芯は感じるものの、とても志・野望・深謀遠慮があったとは思えない。にも関わらず、時代の2トップであるポンペイウスとクラッススを抱き込めたな、と。結局実績や能力もさることながら、人心掌握術(術というほどチープなものじゃないと思うけど)がその人の最終的な評価を形作るのかもしれない。

P235
「あの人が、カネの問題で訪れた連中相手にどう対するかを眼にするたびに、わたしの胸の内は敬意でいっぱいになるのだった。それは、あの人がカネと言うものに対してもっていた、絶対的な優越感によるものだと思う。
あの人は、カネに飢えていたのではない。他人のカネを、自分のカネにしてしまうつもりもなかった。ただ単に、他人のカネと自分のカネを区別しなかっただけなのだ。あの人の振る舞いは、誰もがあの人を支援するために生まれてきたのだという前提から出発していた。わたしはしばしば、カネに対するあの人の超然とした態度が、債権者たちを不安にするよりも、彼らにさえ伝染する様を見て驚嘆したものだ。そういうときあの人は、かの有名な、カエサルの泰然自若、そのものだった」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2017年2月19日
読了日 : 2017年2月13日
本棚登録日 : 2017年2月13日

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