泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2005年2月18日発売)
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愛も恋も若さも、ずっとそのままじゃいられない。
諸行無常を生きる女性たちの短編集。

ページをめくると、ぽつりぽつりと過去が滴ってくる。きっとこの本を読んだ他の誰かも、私とは違う過去に思いを馳せたのだろう。

主人公の女性たちのほとんどは、本能的で、愛の前ではとことん無力。それは自分とは違う生きものなのではと疑ってしまう程に。

ぴかぴか光る今も、そのうち傷がたくさんついて、手に入れた頃のようには光らなくなってしまう。それを劣化だと思うか、それとも経年変化だと思うかは、その時の自分の気持ちによって変化するものだから、恐がり過ぎたって仕方がないのかもしれない。ものはみな平等に変わっていく。たとえくい止められたとしても、残るのは以前のそれとは違うもの。

誰にも分かってもらわなくて良い。安全でも適切でもなくても、私しか知り得ない幸福だってある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 恋愛
感想投稿日 : 2022年6月17日
読了日 : 2022年6月15日
本棚登録日 : 2019年5月29日

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