勉強の哲学 来たるべきバカのために

著者 :
  • 文藝春秋 (2017年4月11日発売)
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本棚登録 : 3217
感想 : 237
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 千葉雅也さん、かれこれ一年くらいずっと気になっていた!書店の本棚で名前を見かけるたび、読んでみようかな、でもしばらく前から取り組んでいる島田雅彦さんの「尾行」で今も継続的に忙しいし、たぶん千葉さんの本を一冊読んじゃったらどんどん他のも読みたくなって新たな「尾行」旅が始まっちゃうし、哲学の本ならハイデガーと木田元さんが好きでまだ読んでいない本たくさんあるし、ここから新しい哲学者さんに手を出すのはやめておいた方がいいかな、などと逡巡してなかなか踏み出せなかった。そんな折、息子の小学校の懇談会で、以前から息子がお世話になっていてわたしもとてもいい方だなと思っていた先生が、推薦図書としてこの本を挙げていた。時が来た!と思い、学校帰りに図書館に直行した。
 すごくよかった!蛍光ペンで何本も線を引きたい衝動に駆られまくるも、図書館の本なのでできなかったのが残念。たぶん返却したあと自分用に一冊買う。
 『勉強の哲学』というタイトルながら、誰彼構わず「勉強は素晴らしい!」「勉強するべき!」と押し付けてくるような内容ではなく、「勉強するとこういうことが起こるかもよ、興味があるなら読んでみたら?」という軽快なスタンス。勉強するもしないも本人次第、どちらが正しいとかはない。

 「いまの生き方で十分楽しくやれているなら、それ以上「深くは勉強しない」のは、それでいいと思うのです。
 生きていて楽しいのが一番だからです(P.11)」

 一般的に「哲学書」と聞いて思い浮かべるような難解な文章はないので、哲学という分野に馴染みがなくても読みやすいとは思うけれど、とはいえ、聞き慣れない語彙や概念(「勉強の有限化」、「環境の『コード』」など)が次々と登場したり、日常的に使われる単語(「他者」、「ノリ」、「決断」など)に独自の意味が付与されたりするので、何かしながら隙間時間にちょこちょこ、というような読み方は難しいかもしれない。わたしは読み進めていくにあたり、これらの独自の語彙やその新たな意味を脳内に定着させることが必要と感じたので、重要語句辞典のようなかたちでノートにメモを取りながら読んだ。
 何かを学び始めるにあたって手に取るべき本の種類と選び方、その本の読み方、信頼できる研究者や専門家の見つけ方といった、勉強に際しての読書論も展開されていてとても興味深かった。文中で千葉さんがでおすすめしていた、ピエール・バイヤール著『読んでいない本について堂々と語る方法(筑摩書房)』もおもしろそうだったので図書館で予約した。こうやって次から次へと読みたい本が伝染していく。伝染?なんか違う?まあいいか。楽しみ!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月10日
読了日 : 2023年10月5日
本棚登録日 : 2023年10月5日

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