アメリカの〈周縁〉をあるく: 旅する人類学

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  • 平凡社 (2021年7月23日発売)
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感想 : 7
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最初のニューメキシコのチャプターでぐわっと持っていかれた。自分がもともとジョージア・オキーフに興味があったのと、先住民の家族とのプライベートな交流という希少体験というインパクトの強さもさることながら、行き先だけ決めてあとは行き当たりばったりその時側にいた人に話しかけて旅が進んで行く、私の理想の旅スタイルだったから。その辺の人に聞いたレストラン行ってみたり、そのレストランにいた人と話してみたり。

観光スポットを全否定してイキるつもりはないし多少は行ってみたりもするけど、なんかもうそういうのは飽きてしまった。2人の道中にはいわゆる観光地はない、ラシュモア山くらい。ラシュモア山見た時の冷めていく感情が自分に似ていた・・・

他は比較的そうでもなくて、旅行ものとして読むことも可能といえば可能だけど、最後の章が筆者の文化人類学者たる所以のある考察が一番含まれていて、また時期もちょうどトランプが選出される頃というのもあいまって少し難しく、でもニュースで見たりした保守層の強い地域のリアルな見聞といった感じで興味深かった。

P219:物乞いと現代社会に大した違いはない、という文章がグサっときた。
「カネがないと生きていくのが難しくなった現代社会で、誰もがカネを手に入れたがる。物乞いはあからさまなやり方でカネを要求し、物売りやサーヴィス提供者はオブラートにくるんでその実態が見えないやり方でカネを奪い去る。前者は自身の要求を相手にさらす。後者は、相手のうちに要求を生みだし、合意を形成した上で、カネを求める。だから、相手にカネを出してもらうことを最終目的とする点で、大した違いはない。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年9月12日
読了日 : 2021年9月12日
本棚登録日 : 2021年9月12日

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