「とつぜん」財布が消えたとか、「とつぜん」彼はいなくなったとか言うが、この小説の主人公の場合「あったはずの私の外套がとつぜん消えた」ことが問題になる。しかし本当は「とつぜん」なんてことはない。そこには何らかの境界があるはずで、だから主人公は「あった」と「消えた」の間で、というより(あの外套を着ていた)戦前と(あの外套をなくした)戦後の間で「挟み撃ち」を食らうのである。一種の戦争後遺症。
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2011年10月22日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2011年7月30日
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