第三次世界大戦はもう始まっている (文春新書)

  • 文藝春秋 (2022年6月17日発売)
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フランスの人類学者(歴史人口学・家族人類学)、エマニュエル・トッドさんが、ウクライナ戦争について緊急出版した書籍。

興味深かった。
新しい視点を与えてくれました。

文藝春秋に掲載した記事(日本人向け)に加え、2017年のポーランド人ジャーナリストによるインタビュー記事、2021年のフランスでの記事をまとめたもの。

ウクライナ戦争が始まってから、いくつかの記事や書籍を目にしてきたけれど、トッドさんの考え方は視点が違って興味深かった。


普段私たちが目にしている情報は、日本が属している「広義の西洋」の視点であり考え方からのものなのだけれど、この方は、人類学者として、少し引いた視点から世界を見ているという感じ。

うまく言えないのだけれど、一言で私なりの解釈を書くと、

『おかしくなっているのはロシアではなく、(実は少数派である)西洋側なのではないのか?』
(※私の解釈です)

ということ。

最も進んでいると思い込んでいる「西洋」は、貧困化や分断や経済の歪みによって、非合理的な社会に変貌してしまっているのに、当の本人たち(西洋の中にいる人たち)はそれに気が付かずマウントだけ取ろうとしているのではないか。

そして、目の前で起こっているウクライナでの戦争は、米と英の支援を受けたロシア内戦、とも言えるのではないか。

今後、ロシアや、その他の国々と、ヨーロッパ+広義の西洋に含まれる日本や韓国が、どのように世界のバランスをとっていくべきなのかを、今一度引いた目で見つめるべきなのでは、ということを言いたかったんだと思う。
(※何度も書くけど、私なりの解釈です)



とても興味深かったのは、「専制国家」とか「民主主義国家」というものと、「家族人類学」の視点との相関関係がある、というようなことが書かれていたこと。

実は私が、エマニュエル・トッドさんの名前を知ったのは、少し前に読んだ本郷和人さんの「日本史のツボ」の中でした。

家族の形というのは、政治形態にも影響するということと、一番新しいと思われている「核家族」が、実際には一番「原始的な家族の形」なのだということが参照されていました。核家族→父系・外戚系家族→共同体家族、と進化している、と。

この分類で考えれば、西洋は「核家族」であり、ロシアは「共同体家族」。西洋の中でも、ドイツと日本は「父系家族」に近い。ウクライナは、もともとロシアではあったけれど「核家族」。政治がこの家族形態を作ったのではなく、家族形態の変化によって政治や国家が形作られている、と。

新しい共同体家族をベースとしている国々が、古くて不具合のある(※私の勝手な解釈)核家族をベースとしている国々(西洋)に対して考え直しを迫っている?
そんなふうに解釈することもできるのかも??(※私の勝手な解釈)


だからといって、作り込まれてきた社会をまっさらにすることはできないわけなので、この戦争を、どうやって終わらせればいいのか、どうやって両陣営が納得すればいいのか、政治家だけでなく、末端の私たちも考えていかなければならないのかもしれないと感じました。

難しすぎる。


いや、それにしても、この本は興味深かった。
新しい視点を与えてくれた。

こういう新しい視点を常に意識して物事を見なくてはならないと感じました。

…どうすればいいのかわからないけど…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 一般教養・科学・医学
感想投稿日 : 2023年1月28日
読了日 : 2023年1月28日
本棚登録日 : 2023年1月28日

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