紙屋ふじさき記念館 春霞の小箱 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2022年3月23日発売)
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感想 : 41

サークルをあげての紙漉き体験。「なにもしなければ、失うものはない。でも、あたらしく得るものはない。まわり道でも、失敗しても、やってみることに意味がある」(p.96-97)という思いもあらたに。墨流しの技法への興味、父がむかしの紙作りやその周辺を扱った小説を描きたいと考えてたことを知り、またそれに関連して民藝の運動にも興味がでてきて。江戸時代の紙問屋との戦い、軍事利用。きれいなだけじゃない、紙の歴史のなまなましい側面も。すべては、記念館の閉館へ向けての、ワークショップの充実、Webサイト運営、閉館イベント、閉館後の本社での活動へと向けられていくかと思われた矢先の終章。裏表紙に書かれた"予想外"の事態がまさかこんな形とは。今までそんなことは露ほども示唆されていなかったのに。実在の時系列とは独立して進んでいたかのような物語世界で、急に記念館の閉館が実際のあの年月に重ね合わされるだなんて。そこから引き起こされるカタストロフに、落差に目眩のする思い。続編描かれるのだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年8月28日
読了日 : 2022年8月27日
本棚登録日 : 2022年8月24日

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