生き残った帝国ビザンティン (講談社現代新書 1032)

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  • 講談社 (1990年12月20日発売)
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ローマ帝国の危機を前にして、キリスト教を取り入れたコンスタンティノス一世、古代民主政治に否を突きつけたユスティニアヌス一世からはじまって、イタリアよりスラヴ人への世界へと目を向けたコンスタンティノス五世、地方貴族の台頭を前にして、彼らとの提携へと支配体制を根本的に転換したアレクシオス一世、みずから国営模範農場に力を注いだヨハネス三世、バルバロイ(野蛮人)と軽蔑されてきた西欧に援助を求めたマヌエル二世。いずれの皇帝もただ伝統を守ったのではなく、新しいことを行なったのである。(pp.245-246)とあるように、柔軟にその形を変えていったこと。"「ローマ」理念に民衆の心を深くとらえたキリスト教を融合させて、その国家イデオロギーとしたところに、国家の強靭さの秘密があったのである。"(p.54),"血統や家柄には関係なく、実力と運さえあれば皇帝にさえなれるという、開かれた社会をビザンティン帝国はもっていたのである。"(p.76)という強さの秘密。これらがビザンティン帝国を生き残らせたのだ、と。そして、著者のキリスト教観も縦横に語られる。いわく、支配者に服従することとの親和性。異端とは聖書に忠実な人、と定義すべきではないか、という問いかけ。聖像崇拝を禁止することそれ自体は、はたして神を冒涜することであったのだろうか。"全能の神が、人々を救うために、人間の姿をとって地上にあらわれた、と説くところにキリスト教の最大の魅力があったのである。"(p.136)/

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感想投稿日 : 2021年6月11日
読了日 : 2021年6月1日
本棚登録日 : 2021年6月9日

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