ルネサンス (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社 (1993年7月5日発売)
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感想 : 6

今更ながら、西洋史の大家による「ルネサンス」概説。前半は理解しやすくよみやすく、なんでかと巻末みたら「NHK市民大学」のテキストだったとのこと。どおりで。その分後半の各論部分にはやや歯ごたえを感じてしまった。30年前から、いわゆる「ルネサンス」への疑問はかかげられてたんだな、と。いわく、中世に人間と文化が暗黒に沈んでいた、という見方への批判。ルネサンスが近代世界観の創造を達成したというのは早計ではという疑問。「再生」というが同一物の復活ではないのでは、という視点など。ルネサンスとは、暗黒からの離脱と、光明への跳躍。「古代の再生・復活」とは、ルネサンス人が古代人になることではなく、じつは端的に「古代の発見」。「死の勝利」とか「死の舞踏」とかよばれる画像が多くつくられたこと。善と悪、美と醜、それに全知と虚無がわかちがたく同居。15世紀ルネサンス人は、新プラトン主義を鍵として、「ヘルメス文書」を理解し、実際上の知識・技術である占星術・錬金術を学びとったこと。など、その特徴を論じるさまざまなトピック、論点は興味深く。最後は、「大航海の成功は、ついにはルネサンスを暗殺することになろう。宗教改革の嵐は、直接ルネサンスをたおしはしなかったが、しかしやがてローマ法王庁は、ルネサンス人の楽天的な世俗精神をうとましくおもいはじめ、カトリック改革という引きしめ策を講ずる」(p.291)と。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年12月15日
読了日 : 2022年12月15日
本棚登録日 : 2022年12月15日

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