主人公正紀の岳父にして当代藩主正国の、奏者番辞任をめぐって広がる波紋がこの巻の主題。主人公より、正国の重厚さが強く印象に残る巻だった。ただ、尾張・水戸と白河の力比べみたいな展開の中の、尖兵としての井上家一万石、というう立ち位置だと、確かに当人たちの苦労もあるが、バックの力次第みたいなところもあり、そこはあまり個人的には好みではないなと思うところ。また、いくら自分の派閥の頭目の見方になってくれなかったからといって、旗本が、逆恨みで、他家に火をつけたり、藩主を害そうとまでするものか、とこれまでの巻と同様思わぬでもなし。次巻は、いよいよ定信の棄捐の令(=徳政令)がふるわれるのか。以下目に止まったところ。/同じ吉宗様の孫である将軍にならなかった治済様が大御所の尊号を得ることを、よしとるすると思うか(正国)/だからあのご仁は、何があっても口には出さぬだろう。しかしそれが、胸の内のどこにもないと言い切れるか(正国)/人は、思惑通りには動かぬものだ。それをあのご仁はわかっておらぬ(正国)/定信様の施策が、真に有効なものであれば別だがそうではない。泥舟には乗れぬ(正国)/
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- 感想投稿日 : 2021年1月27日
- 読了日 : 2021年1月25日
- 本棚登録日 : 2021年1月23日
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