巡礼

著者 :
  • 新潮社 (2009年8月28日発売)
3.66
  • (25)
  • (44)
  • (39)
  • (7)
  • (4)
本棚登録 : 337
感想 : 63
5

「ゴミ屋敷」の特集は、TVで何度か見たことがあった。
でも、なぜ人がゴミを集めてしまうのか、納得がいかなかった。
でも、この小説を最後まで読んで、
このような理由からゴミを集める人もいるのかもしれないと
初めて納得がいった。

人は、頭で分かっていることを、
必ずしも実行できるわけではない。
それは意志が強いとか弱いとかそういう問題ではなくて、
こみあげてくる不安とどう向き合うかという
問題なのではないかと思う。
それをこの小説はとてもよく描いていたと思う。
主人公の不安や焦燥感や絶望が分かるから
読んでてやりきれない気分になった。

ラストは、一瞬「え、こうやって終わるの?」と思ったけど
ラスト二行を読んで、この終わり方でよかったと思った。

橋本治の文章は、理屈っぽいというか
観念的というかで、ちゃんと読んでないと
分からなくなってしまうことも多々あったけど
中盤から読みやすくなった。
久しぶりに重~い作品を読んだけど
最後まで読んでよかったと思った。
いい作品だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: その他
感想投稿日 : 2012年2月27日
読了日 : 2012年2月27日
本棚登録日 : 2012年2月27日

みんなの感想をみる

コメント 4件

reader93さんのコメント
2012/03/24

christyさんのレビューを読んでこの本がとても読みたくなりました。巡礼というタイトルと、ゴミ屋敷に住む心理とのつながりを考えてしまいました。ラストも面白そうだし、読んでみたいです。

christyさんのコメント
2012/03/24

>reader93さん、この作品、本当にいい作品でしたよ~。もうぜひ、ぜひおすすめです。ものすごく奥の深い作品でした。タイトルの「巡礼」というのも、最後で納得のできるタイトルでしたよ。
最初のほうの文体が読みづらくてイライラして、やめたくなるのですが、途中から変わってきますので、前半だけ我慢して読んでもらいたいです。これで、またブック倶楽部したいですね~。

reader93さんのコメント
2012/07/01

これ読み終えました。何だかとても考えさせられる本でした。自分を忠市の状況に置き換えると胸がしめつけられそうでした。ラストはそうくるか〜!と思いました。でもchristyの書かれたとおり、この終わり方で良かったのでしょうね。忠市が最後に弟と一緒で良かったと思います。

christyさんのコメント
2012/07/02

>reader93さん、reader93さんのレビューも読みました。とても的確に表現されてて、「そうそう」と思いながら読みましたよ(笑)。自分では言語化できなかったので!
この作品は本当に深いですよね。喪失感とか孤独とか、誰もが体験するものをどう自分の中で消化、あるいは浄化させるかというのが、大切なことなんだなあと思いました。また、やはり人を支えるのは人の愛情なんだなあと強く思った作品でもありました。

ツイートする