黒い雨 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1970年6月25日発売)
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感想 : 328
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2020年8月、「黒い雨」訴訟のニュースを目にした。原爆関連のニュースであることは分かるものの、自分はそれ以上に詳しいことを知らない。

そこで本作、黒い雨を手に取った。

果たして、内容は事前の予想とはやや異なる。広島を、原爆を描いていることは確かなのだけど、徹底的に市民目線だ。

大きな爆撃が起こった。今回の爆弾は何かが違う。不安感が止まない。

そのような観察や心理描写が続く。

それはとてもクリアな追体験だった。道端に打ち捨てられた死体の、その臭気が音を伴って匂い立つような、とても深い読書体験。

また、これらの描写は「被爆日記」の清書という形で為される。戦後の視点から過去を振り返るという手法は、ある種ユニークだった。

総評。とても重たくディープな一冊。けれど、恣意性を排しているので、誰もがあの時代のあの場所に降り立つことができる。

本書の紹介文はこのようにある。

原爆の広島――罪なき市民が負わねばならなかった未曾有の惨事を直視し、“黒い雨"にうたれただけで原爆病に蝕まれてゆく姪との忍苦と不安の日常を、無言のいたわりで包みながら、悲劇の実相を人間性の問題として鮮やかに描く。

なるほど。「無言のいたわりで包みながら」というのは非常にしっくりくる形容。


(書評ブログもよろしくお願いします)
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読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年10月6日
読了日 : 2020年9月30日
本棚登録日 : 2020年8月27日

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