やさしい訴え (文春文庫 お 17-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (2004年10月8日発売)
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本棚登録 : 1457
感想 : 152
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この物語は果たしてハッピーエンドなのだろうか。自分にはとてもそうは思えなかった。

瑠璃子は夫の不倫と暴力から逃げるようにして、林の中のペンションにやってきた。そこで新田というチェンバロ製作者と出会う。

瑠璃子はまもなく新田に恋に落ちる。新田と初めて肉体を重ねるシーンは非常に印象的。

時間が恐ろしくゆっくりと流れるシーンだった。その瞬間の音、色、光は細やかに描写され、感覚が精緻化されてしまう。スローモーションになった場面は1枚の絵になって強烈に記憶に残った。

そして新田もまた傷を負った人間だった。子ども時代からピアノの英才教育を受け、抑圧されながら育った。そしてある日、人前で一切楽器が弾けなくなる。

だけど、薫という女性の前では不思議とチェンバロを弾けてしまう。

それを遠巻きに見ていた瑠璃子。演奏していたのは「やさしい訴え」。新田と薫の強固な精神的な結びつきを見せつけられ、打ちひしがれる。とても表層的な、肉体的な関係で満足していた自分が惨めになる。

そのあたりから夢中になって読んだ。ただ美しいだけの小説ではなさそうだと分かってくる。

(長くなってしまうので、続きは書評ブログでどうぞ)
https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E6%9C%AA%E7%86%9F%E3%81%A7%E6%AE%8B%E9%85%B7%E3%81%AA%E4%BA%BA%E3%80%85_%E3%82%84%E3%81%95%E3%81%97%E3%81%84%E8%A8%B4%E3%81%88_%E5%B0%8F%E5%B7%9D%E6%B4%8B%E5%AD%90

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 恋愛小説
感想投稿日 : 2019年11月3日
読了日 : 2019年11月3日
本棚登録日 : 2019年11月3日

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