この物語は果たしてハッピーエンドなのだろうか。自分にはとてもそうは思えなかった。
瑠璃子は夫の不倫と暴力から逃げるようにして、林の中のペンションにやってきた。そこで新田というチェンバロ製作者と出会う。
瑠璃子はまもなく新田に恋に落ちる。新田と初めて肉体を重ねるシーンは非常に印象的。
時間が恐ろしくゆっくりと流れるシーンだった。その瞬間の音、色、光は細やかに描写され、感覚が精緻化されてしまう。スローモーションになった場面は1枚の絵になって強烈に記憶に残った。
そして新田もまた傷を負った人間だった。子ども時代からピアノの英才教育を受け、抑圧されながら育った。そしてある日、人前で一切楽器が弾けなくなる。
だけど、薫という女性の前では不思議とチェンバロを弾けてしまう。
それを遠巻きに見ていた瑠璃子。演奏していたのは「やさしい訴え」。新田と薫の強固な精神的な結びつきを見せつけられ、打ちひしがれる。とても表層的な、肉体的な関係で満足していた自分が惨めになる。
そのあたりから夢中になって読んだ。ただ美しいだけの小説ではなさそうだと分かってくる。
(長くなってしまうので、続きは書評ブログでどうぞ)
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- 感想投稿日 : 2019年11月3日
- 読了日 : 2019年11月3日
- 本棚登録日 : 2019年11月3日
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