暗黒館の殺人 (下) (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社 (2004年9月10日発売)
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感想 : 176

 ようやく読みました、暗黒館。幸せ。
 ひとまず読了直後の感想は「ああ、これがすべての原点か」と。
 相変わらず登場するのは江南孝明くん。よしときゃいいのに、山奥に立つ暗黒館の噂を聞きつけて一人で見に行こうとする。そうすると必ず事件に巻き込まれるってのにね。せめて鹿谷さん、待ってればいいのにね。
 深い山奥にある湖の島に立つ暗黒館。常に雨戸が閉められ、壁から屋根から何もかも真っ黒。館内部も真っ黒で、ところどころに赤が入り込む。そこに暮らす、黒魔術的な儀式を行う家族。偏屈そうな家長。気の狂った女、達観してる青年。知恵の遅れた子供、主に忠実な執事。これにプラスしてシャム双生児の少女たち。
 もうね、てんこもり。ここまで詰め込むか、ってくらいに。
 「“視点”」という表現でころころ主体が変わるという手法は微妙だと思ったが、まあこのオチにもって行くにはそうするしかないのだろうなぁ。
 中心は三人、江南くん、「中也」と呼ばれる青年、館に忍びこんでいた市朗少年。
 どれもこれも名前が曖昧で、どんなオチが待ってるのかと思えば。
 ネタバレにつき空白部分は反転処理。
 事件に巻き込まれた江南くんが「江南孝明ではない」ってことはかなり始めに考える。けどなぁ。普通あそこまで「一致していたらイコールで繋げる」だろ。うーん。確かにねラストで明かされてるように、いたるところに伏線は張ってあったさ。「時代が違うんじゃないか」ってのも思ったさ。あー、でもうん。そうだね、伏線を拾いきれてなかったんだね。
 「中也」ってのが一体誰なのか。名前が出てこないってのと、あと彼らがいた当時「暗黒館の改修工事に携わった建築家が「中村某」としか表現されない」ってのも伏線の一つだったんだね。途中で気づけはしたもののそれでも、ラストで実際にその言葉が出て来たらゾクリとするなぁ。
 そもそも「江南くんがどうしてそんな体験をしたのか」という部分が非現実的で一切説明がなかったが。「そこが青司が携わった「暗黒館」である」ということだけで納得できる高柳は、相当毒されているのだろう。(綾辻に、か、あるいは中村青司に、か。)
 欲を言えば「現実」(と書くと語弊があるが)でもう一捻りオチがあればよかったな。「青司の提案で「惑いの檻」を封じるように十字架を象った渡り廊下を作った」という部分がだけじゃ弱いよな、と。(これが作者の意図したオチなのかは知らないが。)まあ、水車館のオチと比べるからそう思うんだろうな。
 「暗黒館」は原点故のオールスター。水車館の藤沼一成、迷路館の宮垣葉太郎、時計館の古峨精計社。黒猫館はやっぱりアリスだったね。人形館がないのは青司の設計じゃないから。
 館シリーズすべてを読んでから読むのが一番良い作品。

04.09.13

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ・ホラー
感想投稿日 : 2013年1月1日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年1月22日

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