朝鮮・韓国近現代史を専門にする、日本人と在日朝鮮人二世の学者による共著。
著者らはまえがきで、本書は、大きくは、「韓国併合前後から、植民地期の在日朝鮮人世界の形成を経て、戦時期の試練へと至る時期」を扱った前半と、「朝鮮解放から、高度成長期以後の在日朝鮮人の世代交代や多様化を経て、グローバリゼーションの時代へと至る時期」の二つの部分から成り立ち、前半は「植民地と支配本国との間の移動という特殊性を持ちながらも、現代の移住労働者と共通する面があると考え」て「移民労働者という側面に注意を払うことにし」、後半は「国籍や民族にまつわる画一的な見方や観念ではもはや捉えきれないような、在日朝鮮人のありのままの多様な営みや思いを記すように努めた」と書いている。
私は、第二次大戦と朝鮮戦争を経て、北朝鮮と韓国という二つの祖国を持つこととなった在日朝鮮人の歩みと現状に関心をもって本書を手に取ったが、第二次大戦までは、植民地と支配本国という比較的シンプルな構造の中にあった在日朝鮮人の世界が、戦後、朝鮮半島の分断等を背景に大きく変化して行ったことが詳細に描かれている。
具体的には、終戦直後の「朝連」の結成と1949年の解散、日本共産党の指導の下にあった民族対策部「民対派」と金日成など北朝鮮労働党との結びつきを重視する「民族派」の対立、1953年の朝鮮戦争停戦後の北朝鮮の影響を受けた「総連(在日本朝鮮人総連合会)」の発足と1959〜61年の7万人の北朝鮮への帰国、民族教育を重視した「総連」と日本での法的地位の改善に取り組んだ「民団」や「韓学同・韓青同」、1960年代後半の朝鮮籍在日朝鮮人と韓国籍在日朝鮮人の比率の逆転等。
そして、1970年以降については、在日朝鮮人の中で二世世代が70%を超え、高度成長期に人格形成を果たした在日朝鮮人の戦後世代が、就職、結婚、子育てと、生活者として地域社会の現実に向かい合った過程が示され、更に、1980年代後半以降の日本への外国人労働者等の大量流入や韓国人ニューカマーの増加により、在日朝鮮人世界および日本人の意識が変化してきたことが記されている。
歴史認識を背景に日韓関係が冷え込む中で、ややもすると一方的な見方になりがちな両国間の問題を、様々な視点から認識する上で参考になる。
(2015年4月了)
- 感想投稿日 : 2016年1月16日
- 読了日 : 2016年2月12日
- 本棚登録日 : 2016年1月16日
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